①:ナトリウムなどアルカリ金属元素の単体は、ひじょうに反応性が高いので灯油(石油)中に保存します。
この選択肢が誤りです。
有機化合物の単元でも出てきましたが、エタノールをはじめとするアルコールは単体のナトリウムと反応する、というのも重要な特徴です。
ヒドロキシ基 -OH の H が Na に置換される置換反応が起こり、水素 H₂ が発生します。
エタノールの場合・・・
2C₂H₅-OH + 2Na → 2C₂H₅-ONa + H₂ ↑
エタノール ナトリウムエトキシド
・・・という反応になります。
②:この選択肢は、あたりまえに正しいです。一応、補足しておくと・・・
「水酸化ナトリウム」は別名「カセイソーダ」といいますが、「カセイ」は「苛性」という字を書き「皮膚を侵〔おか〕す性質」のことです。水酸化ナトリウムが皮膚についてしまったら、ただちに多量の水で洗い流しましょう。
③:これも有名ですし、頻出問題です。
濃硫酸は水に対する溶解熱がひじょうに大きいので、濃硫酸に水を注ぐのは危険です。
水がすぐに沸騰し、硫酸がまわりに飛び散ってしまします。
濃硫酸から希硫酸をつくるときには、冷却しながら、水の中に濃硫酸を少しずつ入れていきます。
この選択肢は誤りです。
④:濃硝酸は、光により以下の反応式のように分解します。
4HNO₃ → 2H₂O + 4NO₂ + O₂
…そのため、褐色びんに入れて保存します。この選択肢は正しいです。
⑤ 私も「ドラフト」というものを知りませんでしたが、図のような排気装置のことだそうです。(私が高校生のときには、高校の化学室にここまでのものはなかったような気がします。)
どちらにせよ、硫化水素が有毒な気体であることは確かなので、十分な配慮はされるべきでしょう。
この選択肢は正しいです。
正解 ①③
周期表17族の上から順に、F、Cl、Br、I、At の順になっていることに留意しましょう。
多くの場合、答えは周期表の中にあります。
①:同じ族なら、周期表の下にあるものの方が原子量が大きくなるのは、わかりますよね。
F₂、Cl₂、Br₂、I₂、At₂ の順に分子量も大きくなります。
構造がよく似た分子どうしでは、分子量が大きいほど分子間力も大きくなります。
融解や蒸発は、分子が分子間力に打ち勝って離れる現象なので、分子間力が大きいほど融点や沸点も高くなります。
アスタチン分子 At₂ の融点・沸点がこれらのハロゲンの中でもっとも高いと推定できます。
この選択肢は正しいです。
②:①も常温で、F₂、Cl₂ は気体、Br₂ は液体、I₂ は固体・・・ということからも推定できました。
ハロゲンの単体の性質も、原子量の大きさの順に変化していくと、おさえておいていいです。
フッ素 F₂ は水と激しく反応して O₂ を発生、塩素 Cl₂ は水に少しとけて塩素水となること、ヨウ素 I₂ は水にほとんどとけないこと・・・などは、おさえておきたいところです。
この順でいきますと、アスタチン At₂ も常温で水にとけにくいと推定できます。
この選択肢は正しいです。
③:フッ化物イオン以外のハロゲン化物イオンは銀イオンと反応し、沈殿を生じる・・・というのも、ハロゲンの重要な性質です。(ハロゲン化銀は以前はカメラのフィルムにこの原理が使われていましたが、現代ではフィルムそのものを日常生活では見かけなくなったので、以前ほどには重要ではなくなりまりました。しかし、特徴的な色の沈殿を生じ、ハロゲン化物イオンの検出にも使えるので、おさえておくとよいでしょう。)
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl ↓ (白色)
Ag⁺ + Br⁻ → AgBr ↓ (淡黄色)
Ag⁺ + I⁻ → AgI ↓ (黄色)
アスタチン At も同様の反応を起こすと考えられます。この選択肢は正しいです。
④:こういう理屈を積み重ねれば無理なく判断できるところが、正解になることが多いです。
(こういうのは、問題慣れしてくるとわかってきます。)
「電気陰性度」という観点からも考えることもできますが、「周期表」からだけでも考えられます。
周期表でハロゲン(17族元素)の上から2番目の塩素原子の電子配置をみてみましょう。
図のように最外殻に7個の荷電子をもつことが、ハロゲンに共通する性質です(だから、化学的に似た性質を持ちます)。
最外殻には電子が8個入ると安定です。ですので、ハロゲン原子は他から電子を1個もらい、1価の陰イオンになりやすいです。
他から電子を1個もらうということは、その相手は電子を1個失うことになります。
マイナスの電気をもった電子を失えば、その物質の酸化数は上がります。酸化数が上がるということは、その物質は「酸化された」ということになります。
他の原子から電子を奪う性質が強いので、ハロゲンは酸化力がある…といえます。
では、ハロゲンどうしの酸化力の強弱はどうなっているでしょうか?
比較のため、フッ素原子の電子配置を確認します。
塩素とフッ素を比べ、どちらが「酸化力が強い(他の原子から電子を奪いやすい)」か?…推測してみましょう。
他原子から奪った電子は、図で点線の〇で示した最外殻に入ります。
電子はマイナスの電気をもっているので、プラスの電気をもつ原子核がより近くにあるフッ素の方が、塩素よりも電子を取り込みやすいと推測できます。
同様に、周期表の上から「F > Cl > Br > I」に、「1価の陰イオンになりやすい」=「反応性が高い」=「酸化力が強い」と推定されますし、それは実験の積み重ねで確かめられてきました。
例えば、臭化カリウム KBr の水溶液に塩素 Cl₂を加えると、Cl の方が Br よりもイオンになりやすいので塩化物イオン Cl⁻ になりカリウムイオン K⁺ と結びつき、臭化物イオン Br⁻ は臭素原子 Br にもどり、臭素 Br₂ として生成されます。
(反応式) 2KBr + Cl₂ → 2KCl + Br₂
一方、臭化カリウム KBr の水溶液にヨウ素 I₂を加えても、Br の方が I よりもイオンになりやすいので、反応は起こらず何も変化しません。
周期表の位置関係から酸化力は「F > Cl > Br > I > At」なので、Br の方が At よりもイオンになりやすく、臭化物イオン Br⁻ となってナトリウムイオン Na⁺ と結びつき、アスタチンはイオンではなくなり、単体として生成されます。推定される反応式は次のようなものです。
2NaAt + Br₂ → 2NaBr + At₂
臭素の酸化力により NaAt が酸化され(同時に、Br₂ が還元されています)ているので、酸化還元反応が起こります。この選択肢は誤りです。
正解 ④
「鉄」というのは、歴史を通して人類にひじょうに有用な物質なのですが、酸化しやすい(さびやすい、腐食しやすい)というひじょうに大きい欠点をもっています。そのため、さまざまな工夫がなされてきて、ここで扱っているような合金がつくりだされたのも、その例です。
「ステンレス鋼」は、鉄に一定以上の割合のクロム Cr を含ませ耐性を上げたものです。
Cr の含有率が高いほど耐性が上がるようで、規格〔法律のようなもの〕などで含有率が10.5%以上でステンレス鋼と名のってよい、とかあるそうです。(表1にはニッケル Ni もありますが、こちらはそれほど重要ではないそうです。だからこそ、Cr の方が問われているのですが、こういう重要さのみきわめこそ、ふだんの勉強で大切です。)
「ステンレス鋼」は様々な分野で役に立っていますが、身近なところでいえば「流し台(水道の下の部分)」があげられます。常に水にさらされる環境なので、ただの鉄を使っていたら、あっというまに傷んでしまいますよね。
「トタン」は鉄に亜鉛 Zn でメッキしたものです。
酸化還元反応の金属のイオン化傾向に関するところで、よく取り上げられる例なので、そちらも確認しておきましょう。
正解 ア:③ イ:④
酸化還元反応の判断の問題としては、少し難しめかもしれません。
この単元に不安のある方は、解説記事を紹介しますので、そちらで必要なことは復習しておきましょう。
化合物中の各物質の酸化数を判断しないといけません。周期表を頼りにすればいいです。
周期表の原子番号20(Ca)までは、確実に覚えて、いつでも書けるようにしておきましょう。
周期表というのは、使うためにあります。
本来、化学を勉強するときには、先にノートの片隅に自分で周期表を書き、それをみて考えながら進めるものです。(なぜか、あまり知られていませんが・・・)
化合物中の各物質の酸化数も、原子番号20までの周期表に表れる数値が優先されます(上図参照)。
これは、電子配置から必然的にそうなる数値です。
(もちろん例外が出てくる場合もありますが、まず基本線をおさえないと勝負になりません。基本線をおさえることによってはじめて、例外も例外としておさえられます。)
周期表より、塩素原子 Cl のとりやすい酸化数は「-1」・・・これを基準に他の酸化数を決めていきます。
左辺の CuCl₂ :Cl が「-1」で2つあり「-2」。それに合わせ Cu の酸化数は「+2」
右辺の NiCl₂ :Cl が「-1」で2つあり「-2」。それに合わせ Ni の酸化数は「+2」
基本、原子番号20までの周期表にない金属原子は酸化数「+2」が安定と考えておけばよく、Ni の酸化数「+2」というのもそれに合います。(もちろん、「+2」が安定でない金属元素もありますが、それこそ、「+2」が安定のものが多いけど、そうではないものもある…というおさえ方が有効です)
右辺の CuCl :Cl が「-1」。それに合わせ Cu の酸化数は「+1」
Cu が「(+2)→(+1)」と酸化数が下がっているので、還元された原子です。
反応式の係数が物質量を表しているとすると、CuCl の係数は2ですので、2mol の電子が移動したとわかります。
左辺の NiS :S は周期表を頼りに「-2」とすればよいです。Ni の酸化数「+2」となりますが、右辺の Ni の酸化数も「+2」でしたので、ニッケル原子は酸化も還元もされていないとわかります。
右辺の硫黄 S は単体なので酸化数は「0」。この反応で硫黄原子は「(-2)→0」と酸化されています。
正解 ③
情報を整理するため、⑴式、⑵式から中間生成物の CuCl を消去しましょう。
係数も「2」でそろっているので、そのまま辺々をたせばいいです。
CuCl だけでなく、両辺の CuCl₂ もなくなりました。
⑵の反応 CuCl から生じた CuCl₂ は、再び⑴の反応に使うことができる、と説明文にありますが、反応式からもこの反応が完全に進行すると、CuCl₂ は一切消費されないことがわかります。(説明文にも、銅はすべて CuCl₂ に戻されたとする…という確認があります。CuCl₂ が少しでもあれば⑴、⑵の反応は進むということです。)
CuCl₂ の総量(物質量)は反応の総量に影響を与えないということですから、CuCl₂ を40.5㎏という数値が与えられていますが、これは、使わないフェイクの数値だということです。こういうところを正確に判断できるようになりましょう。
上で確認したように、⑴、⑵の反応式をまとめると・・・
NiS + Cl₂ → NiCl₂ + S
反応式の係数が、反応に関係する物質の物質量を示しますので、NiS:1mol を反応させるのに塩素 Cl₂:1mol が必要だとわかります。よって、NiS 36.4㎏の物質量がそのまま、反応した Cl₂ の物質量になり、答えです。
36.4㎏=36400g
原子量は最初のページに与えられていて、Ni:59、S:32より、NiS の原子量は59+32より「91」
求める物質量は、36400(g)の中に 1mol の質量である 91(g)がいくつあるか考えればよく、わり算で・・・
36400÷91=400 「400mol」
正解 ⑤
ちょうど次のページが(下書き用紙)として、計算スペースが十分に与えられています。
きっちり計算しましょう。
まず、陰極と陽極の電子 e⁻ の数を合わせ消すことが考えられます。
ここでは計算過程は省略しますが、⑸の両辺を2倍し⑶~⑸の辺々をたすと・・・
Ni²⁺ + 2H⁺ + 4Cl⁻ → Ni + H₂ + 2Cl₂
・・・が得られますが、ここからどうしていいかみえにくいです。(強引に行けないこともないですが、やめておきましょう。)
「困ったときには、方程式を立てることを考える」・・・というのも有効な方針です。
陰極から出て行く電子 e⁻ の物質量と、陽極に入っていく電子 e⁻ の物質量は同じはずですから、電子 e⁻ の物質量で未知数 w(g) を含む等式を立てましょう。⑶から順にみていきます。
⑶ ニッケル Ni の単体 1mol が生成するには 2mol の電子が必要です。
生成したニッケルの質量は、これが焦点になるところですが w(g)で、モル質量は M(g/mol)を使えという指定があります。
w(g)のニッケルの物質量は、w の中に 1mol あたりの質量である M が考えればよく、わり算で・・・
w÷M=w/M
⑶の反応で使われた電子の物質量はこの2倍で・・・
⑶、⑷は気体の状態方程式から導きます。
「陰極で反応した電子の物質量(⑶、⑷)=陽極で反応した電子の物質量(⑸)」より、
(両辺は2ですぐにわれます。)
正解 ②
以上です。
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井出進学塾 (木曜日, 26 9月 2024 10:08)
to 受験者様
ご指摘ありがとうございます。凡ミスです。
さっそく修正しました。
受験者 (水曜日, 25 9月 2024 21:22)
問2の化学反応式なんですがAg+➕Cl-=ClIというのは間違っていると思うのですがどうでしょう