第2問は全体を通して簡単めです。でも、逆にこういう問題に苦戦される生徒さんも多いかもしれません。
その場合、足りないのは基礎力です。
基礎力とは、各種物理量の理解・・・だけではなく、基本的なかけ算・わり算の使い方が身についているか?・・・などのことです。
この大問の解説では、そういうところも確認していきたいと思います。
ノズルの断面は「円」形と与えられているので、求める水の体積 ΔV は円柱形を考えその体積を求めればよいです。
(底面積)はノズルの断面積 s が与えられているので、あとはこれに(高さ)をかければ体積になります。
ノズルから噴出する水の速さが u と与えられています。
これは、単位時間あたりに(1秒あたりと考えてよいです)ノズルから水がどれだけ出るか?なので、これに時間 Δt をかければ Δt 間に出た水の柱(円柱)の(高さ)になります。
(高さ)=u Δt
よって、
ΔV=s × u Δt= suΔt ・・・(ア)
また、ノズルから噴出した水の体積と、ペットボトル内で減少する水の体積は同じはずです。
ペットボトルの断面積は S₀ 、下降する水面の速さを u₀ とすると、Δt 間の体積の変化量 ΔV は、同様にして
ΔV=S₀u₀Δt とも表されます。
これらより、ΔV を消去し u₀ について解くと・・・
・・・(イ)
設問にもあるように、S₀ 、u 一定とすると、s(ノズルの断面積)は分子にある数字なので、これが小さくなるほど u₀ も小さくなります。
まぁ、水が出て行くノズル(s)を細かくすれば、ペットボトル内の水の体積の減少(ΔV)も遅くなっていくというのは、ごく当たり前のことなのですが、こういうところもきちんと確認しておきましょう。
正解 ⑥
密度 ρ₀ というのは、単位体積あたり(1Lあたりと考えてよいです)の質量のことです。これに「体積」をかければ、求める「質量」になります。
今、体積 ΔV の質量 Δm を求めようとしています。
Δm=ρ₀ × ΔV = ρ₀ΔV ・・・(8)
空気がした仕事 W' も問われています。
p-V グラフの面積から答えてもいいですが、ここでは基本(しくみ)を確認するために「仕事の定義」から起こしてみましょう。
「(仕事)=(力)×(距離)」でした。
(力)から、みていきましょう。
まず、これは意識しておいた方がいいことなのですが、「圧力」というのは、具体的な「力」ではありません。単位面積あたり(1㎡あたりと考えてよいです)にかかる力のことです。
これを、具体的な「力」にするためには、・・・
圧力 p に、それがどれくらいの面積にはたらいているかということで、ペットボトルの断面積 S₀ をかければいいです。
よって、ここで考えている(力)は、…
(力)= p × S₀ ・・・となります。
次に、この力がはたらいた(距離)について考えます。
これは、水面の変化量(減少量)なので、問1で考えたように u₀Δt です。
したがって、圧縮空気がした仕事 W' は・・・
W'=pS₀×u₀Δt
選択肢にありませんが、あわてる必要はないです。
ここまで、しっかり消化していれば S₀×u₀Δt というのは、ΔV のことだとは、すぐにみえますね。
よって、 W'=pΔV ・・・と、なります。
せっかく、圧縮空気の圧力 p は一定…と与えられているので、p-V グラフでも考えてみましょう。
初期状態(t=0、図2の(a))の圧縮空気の体積を V₀ として左図のようなグラフになります。
気体のした仕事は、変化前と変化後の状態を表す、図では赤矢印としていますが、その下の部分の面積に表れます。
体積の変化量は ΔV なので、p×ΔV が W' になることがわかります。
定圧変化では W'=pΔt …という公式で頭に入っている人もいるかもしれませんが、ここでみたような原理はそのつど確認しておきましょう。
正解 8:② 9:①
(ウ)が圧縮空気がした仕事 W' に等しいと仮定し、考察を進めようとしています。
ですので、(ウ)には、仕事 W' と等しくなり得るものが入らないといけません。
まず、(a)はちがいますよね。
運動量は「質量(kg)×速度(m/s)」なので、単位は〔kg・m/s〕です。
一方、仕事の単位はジュール〔J〕なので、同じになりようがありません。
仕事とエネルギーの等価性(ここでは簡単に、単位が同じ〔J〕という意味でとらえればよいです)から、答えは残りの2つにしぼられます。
(b)がいかに違うか?…よりも、(c)がいかに正解かをみていった方が速いでしょう。
噴出した水は、速度 u をもっています。動いているってことですよね。
動いている物体は、運動エネルギーをもっています。
圧縮空気がした仕事が、噴出した水の運動エネルギーに変換された…と、解釈することができます。
((c)が正解。)
(b)については、補足を後述します。
エ:運動エネルギーについて考えればよいとわかりました。
噴出した水は、質量 Δm 、速度 u なので、その運動エネルギーは・・・
これが、圧縮空気がした仕事 W' に等しいので、
これを u について解いていき
((f))が正解。
なお、問題文にあるように u を p と ρ₀ で表すと・・・
水の噴出速度 u は、圧縮空気の圧力の平方根に比例し、水の密度の平方根に反比例するとわかります。(だからどうだということもないですけどね。それっぽい結果になっていることは、そのつど確認しておくとよいです。)
正解 ⑨
なお、(b)についてですが、内部エネルギーとは物体がその内部に持っているエネルギーことなので、高校物理では扱いませんが、とうぜん液体(水)の内部エネルギーというもののもあるでしょう。しかし、それは気体の内部エネルギーと同じように「温度」に表れるものだと思われます(すみません。ここらへん、あまりくわしくないです。みなさんが大学に進学された後、ここらへんを専攻される方がいて、私の解釈におかしな点があれば指摘してくださるとうれしいです)。
ある選択肢を切るためには、それなりの根拠を確認しておきたい、…という人も多いでしょう。私も、そのタイプです。以下、私のですが解釈を述べておきます。(ここまで考えなくても、運動エネルギーが当然正解で、内部エネルギーは不自然、といっていいのですけどね。)
この選択肢が、もし「内部エネルギーの変化量(増加量)」なら、まだわかります。
でも、「内部エネルギー」となっていますよね。
この文章ですと、圧縮空気が仕事をする前、ペットボトル内の水の内部エネルギーは0だった…ということになってしまいます。それは、ありえないですよね。
t=0 のとき、ロケットは静止しているので運動量は0です。
t=Δt のときの運動量はこれと等しいというので、数値は与えられた近似の値を使い上向きを正として、
0=MΔv-Δmu ・・・そのまま答えになります。
正解 ④
推進力・・・上向きの「力」のことです。
「力」とは何でしょう?物理の授業で最初のころ勉強したことを思い出しましょう。
かみくだいていうと・・・
「力とは、物体に加速度を与えるもの」・・・と考えるといいです。
ニュートンの運動方程式では、「(力)=(質量)×(加速度)」の形で表されていることです。
ここでの「推進力」を表してみましょう。
(質量)は、与えられた M を使えばよいです。
(加速度)も、Δt の間に速さは Δv 増加したとあるので、
加速度とは、単位時間あたり(1秒あたりと考えればよいです)の速度の変化量のことです。よって、速度の変化量を時間でわればよく・・・
・・・と表されます。
これが、重力 Mg より大きければよいので、
正解 ④
第2問はいじょうです。
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