共通テスト「物理」過去問解説

2024年度(令和6年度)大学入学共通テスト 本試


どこよりも詳しく、わかりやすい過去問の分析と解説(解説動画付き)


第2問 物体の運動

第2問は全体を通して簡単めです。でも、逆にこういう問題に苦戦される生徒さんも多いかもしれません。

 

その場合、足りないのは基礎力です。

 

基礎力とは、各種物理量の理解・・・だけではなく、基本的なかけ算・わり算の使い方が身についているか?・・・などのことです。

この大問の解説では、そういうところも確認していきたいと思います。

問1 ただの円柱の体積を求める問題です

ノズルの断面は「円」形と与えられているので、求める水の体積 ΔV は円柱形を考えその体積を求めればよいです。

(底面積)はノズルの断面積 s が与えられているので、あとはこれに(高さ)をかければ体積になります。

ノズルから噴出する水の速さが u と与えられています。

これは、単位時間あたりに(1秒あたりと考えてよいです)ノズルから水がどれだけ出るか?なので、これに時間 Δt をかければ Δt 間に出た水の柱(円柱)の(高さ)になります。

 

(高さ)=u Δt


よって、

 ΔV=s × u Δt= suΔt ・・・(ア)

 

また、ノズルから噴出した水の体積と、ペットボトル内で減少する水の体積は同じはずです。

 

ペットボトルの断面積は S₀ 、下降する水面の速さを u₀ とすると、Δt 間の体積の変化量 ΔV は、同様にして

 

 ΔV=S₀u₀Δt とも表されます。

 

これらより、ΔV を消去し u₀ について解くと・・・


・・・(イ)

 

設問にもあるように、S₀ 、u 一定とすると、s(ノズルの断面積)は分子にある数字なので、これが小さくなるほど u₀ も小さくなります。


まぁ、水が出て行くノズル(s)を細かくすれば、ペットボトル内の水の体積の減少(ΔV)も遅くなっていくというのは、ごく当たり前のことなのですが、こういうところもきちんと確認しておきましょう。

 

正解 ⑥

問2 密度の取り扱いと気体がした仕事

密度 ρ₀ というのは、単位体積あたり(1Lあたりと考えてよいです)の質量のことです。これに「体積」をかければ、求める「質量」になります。

今、体積 ΔV の質量 Δm を求めようとしています。

 

 Δm=ρ₀ × ΔV = ρ₀ΔV ・・・(8)

 

空気がした仕事 W' も問われています。

 

 

 


p-V グラフの面積から答えてもいいですが、ここでは基本(しくみ)を確認するために「仕事の定義」から起こしてみましょう。

 

「(仕事)=(力)×(距離)」でした。

 

(力)から、みていきましょう。

 

まず、これは意識しておいた方がいいことなのですが、「圧力」というのは、具体的な「力」ではありません。単位面積あたり(1㎡あたりと考えてよいです)にかかる力のことです。

 

これを、具体的な「力」にするためには、・・・

 

 圧力 p に、それがどれくらいの面積にはたらいているかということで、ペットボトルの断面積 S₀ をかければいいです。

よって、ここで考えている(力)は、… 

 

 (力)= p × S₀ ・・・となります。

 

次に、この力がはたらいた(距離)について考えます。

 


これは、水面の変化量(減少量)なので、問1で考えたように u₀Δt です。

したがって、圧縮空気がした仕事 W' は・・・

 

W'=pS₀×u₀Δt

 

選択肢にありませんが、あわてる必要はないです。

ここまで、しっかり消化していれば S₀×u₀Δt というのは、ΔV のことだとは、すぐにみえますね。

 

よって、 W'=pΔV ・・・と、なります。

せっかく、圧縮空気の圧力 p は一定…と与えられているので、p-V グラフでも考えてみましょう。

 

初期状態(t=0、図2の(a))の圧縮空気の体積を V₀ として左図のようなグラフになります。

 

気体のした仕事は、変化前と変化後の状態を表す、図では赤矢印としていますが、その下の部分の面積に表れます。

 

体積の変化量は ΔV なので、p×ΔV が W' になることがわかります。

 

定圧変化では W'=pΔt …という公式で頭に入っている人もいるかもしれませんが、ここでみたような原理はそのつど確認しておきましょう。

 


正解   8:②   9:①

問3 仕事とエネルギー

(ウ)が圧縮空気がした仕事 W' に等しいと仮定し、考察を進めようとしています。

ですので、(ウ)には、仕事 W' と等しくなり得るものが入らないといけません。

 

まず、(a)はちがいますよね。

運動量は「質量(kg)×速度(m/s)」なので、単位は〔kg・m/s〕です。

一方、仕事の単位はジュール〔J〕なので、同じになりようがありません。

 

仕事とエネルギーの等価性(ここでは簡単に、単位が同じ〔J〕という意味でとらえればよいです)から、答えは残りの2つにしぼられます。

 

(b)がいかに違うか?…よりも、(c)がいかに正解かをみていった方が速いでしょう。

 

噴出した水は、速度 u をもっています。動いているってことですよね。

動いている物体は、運動エネルギーをもっています。

圧縮空気がした仕事が、噴出した水の運動エネルギーに変換された…と、解釈することができます。

((c)が正解。)

 

(b)については、補足を後述します。

 

 

エ:運動エネルギーについて考えればよいとわかりました。

噴出した水は、質量 Δm 、速度 u なので、その運動エネルギーは・・・

これが、圧縮空気がした仕事 W' に等しいので、

これを u について解いていき


((f))が正解。

 

なお、問題文にあるように u を p と ρ₀ で表すと・・・

水の噴出速度 u は、圧縮空気の圧力の平方根に比例し、水の密度の平方根に反比例するとわかります。(だからどうだということもないですけどね。それっぽい結果になっていることは、そのつど確認しておくとよいです。)

 

正解 ⑨

 

 

なお、(b)についてですが、内部エネルギーとは物体がその内部に持っているエネルギーことなので、高校物理では扱いませんが、とうぜん液体(水)の内部エネルギーというもののもあるでしょう。しかし、それは気体の内部エネルギーと同じように「温度」に表れるものだと思われます(すみません。ここらへん、あまりくわしくないです。みなさんが大学に進学された後、ここらへんを専攻される方がいて、私の解釈におかしな点があれば指摘してくださるとうれしいです)。

 

ある選択肢を切るためには、それなりの根拠を確認しておきたい、…という人も多いでしょう。私も、そのタイプです。以下、私のですが解釈を述べておきます。(ここまで考えなくても、運動エネルギーが当然正解で、内部エネルギーは不自然、といっていいのですけどね。)

 

この選択肢が、もし「内部エネルギーの変化量(増加量)」なら、まだわかります。

でも、「内部エネルギー」となっていますよね。

 

この文章ですと、圧縮空気が仕事をする前、ペットボトル内の水の内部エネルギーは0だった…ということになってしまいます。それは、ありえないですよね。

問4 運動量の保存

t=0 のとき、ロケットは静止しているので運動量は0です。

t=Δt のときの運動量はこれと等しいというので、数値は与えられた近似の値を使い上向きを正として、

 

 0=MΔv-Δmu ・・・そのまま答えになります。

 

正解 ④

問5 「力」とは

推進力・・・上向きの「力」のことです。

 

「力」とは何でしょう?物理の授業で最初のころ勉強したことを思い出しましょう。

かみくだいていうと・・・

 

「力とは、物体に加速度を与えるもの」・・・と考えるといいです。

 

ニュートンの運動方程式では、「(力)=(質量)×(加速度)」の形で表されていることです。

 

ここでの「推進力」を表してみましょう。

 

(質量)は、与えられた M を使えばよいです。

(加速度)も、Δt の間に速さは Δv 増加したとあるので、

加速度とは、単位時間あたり(1秒あたりと考えればよいです)の速度の変化量のことです。よって、速度の変化量を時間でわればよく・・・

・・・と表されます。


これが、重力 Mg より大きければよいので、

正解 ④


第2問はいじょうです。

ご意見・ご感想、お待ちしています。

 

 


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