第1問の解説は、こちらです。
生成熱が典型的で、プラス(発熱反応)の場合もマイナス(吸熱反応)の場合もあります。
その他にも、どちらの場合もあるものを選べということです。
この種の問題でポイントになるのは、「中和反応は発熱反応」・・・ということです。
これさえ覚えておけば、あとのものは常識から判断できます。
①:炭化水素が燃焼するので、典型的な発熱反応です。なにせ、燃焼してますからね。
燃焼熱は、これでもかというくらいにあたりまえに発熱反応です。
特に、炭化水素(有機物)の燃焼で得られるエネルギーを、人類は大いに利用してきました。
②:発熱反応です。
うすい強酸と、強塩基が反応するとき、その種類によらず、ほぼ一定の値の熱量を発します。
③:イメージしやすい(実験したことがあるかもしれない)ところでいいますと、硫酸H₂SO₄を水にとかすと熱くなりますし、硝酸アンモニウムNH₄NO₃を水にとかすと冷えますよね。
水にとかすと水の温度が上がる物質もあるし、水の温度が下がる物質もあるということです。
生成熱と同じく溶解熱も、発熱の場合も吸熱の場合もある反応です。これが答えです。
④水で考えてみましょう。逆に固体の氷がとけるとき、これは周りから熱を奪う吸熱反応です。
ジュースに氷を入れると冷たくなりますが、あれは氷が冷たいからという理由よりも、氷(固体)が液体に変化するとき、周りから熱を奪くから・・・という理由の方が大きいです。
氷が融解するとき周りから熱を吸収するように、液体が凝固して固体になるときは、周りに熱を発します。
液体の凝固は、発熱反応です。(エネルギー図を示そうと思いましたが、新課程の方針を見極めてからにします。)
正解:③
必ず使うでしょうから、まず、酢酸ナトリウムと硫酸の物質量を求めておきましょう。
〔酢酸ナトリウムCH₃COONa〕
モル濃度が0.06mol/Lで、それが50mLあります。
50mLは、【L】単位に換算する必要があります。
(m)というのは、1000分の1という意味なので、これに10⁻³をかけて・・・
50×10⁻³〔L〕 ・・・です。
指数は、しばらく「-3」のままでいいでしょう。
酢酸ナトリウムの物質量は、1Lあたりの物質量(モル濃度)に、それが何Lあるか(体積)をかければよく・・・
0.06×50×10⁻³ = 3×10⁻³〔mol〕 に、なります。
次に〔硫酸H₂SO₄〕の物質量ですが、モル濃度、体積とも酢酸ナトリウムと同じなので、計算は省略します。硫酸の物質量も・・・
3×10⁻³〔mol〕 です。
次に、これらの物質の水溶液中でのようすをみてみます。
まず、酢酸ナトリウムですが、これは水溶液中でほとんど完全に電離します。
CH₃COONa → CH₃COO⁻ + Na⁺
3×10⁻³〔mol〕の酢酸ナトリウムが電離し、水溶液中には、3×10⁻³〔mol〕の酢酸イオン(CH₃COO⁻)と、3×10⁻³〔mol〕のナトリウムイオン(Na⁺)が存在しています。
次に硫酸ですが、強酸なので、水溶液中で完全に電離しています。
H₂SO₄ → H⁺ + SO₄²⁻
3×10⁻³〔mol〕の硫酸が電離し、水溶液中には、3×10⁻³〔mol〕の水素イオン(H⁺)と、3×10⁻³〔mol〕の硫酸イオン(SO₄²⁻)が存在しています。
混ぜる前の状態で、CH₃COO⁻、Na⁺、H⁺、SO₄²⁻ が、それぞれ3×10⁻³〔mol〕ずつ存在しているということです。これを混合します。設問にもありますが、50mLずつあったので、合わせて100mLの水溶液になります。
ここで、この問題のポイントです。酢酸は、弱酸でした。
弱酸はほとんど電離せず、水素イオンH⁺ を、ほとんど出さないので弱酸です。
電離式でいうと・・・
CH₃COOH ⇄ CH₃COO⁻ + H⁺ ・・・①
この式で、右向きの反応はあまり起こらない(酢酸のごく一部しか電離しない)ということです。
逆に、左向きの反応の方が起こりやすいです。
今、混合液の中には、CH₃COO⁻ と H⁺ が、それぞれ3×10⁻³〔mol〕ずつ存在しています。
この、ほとんどが反応して酢酸分子 CH₃COOH になっていると考えていいです。
CH₃COO⁻ + H⁺ → CH₃COOH
反応式の係数から、3×10⁻³〔mol〕の CH₃COO⁻ と3×10⁻³〔mol〕の H⁺ から、3×10⁻³〔mol〕のCH₃COOH が生じます。
ここを出発点としてしまいましょう。水溶液中には、ナトリウムイオン Na⁺ と硫酸イオン SO₄²⁻ もありますが、これらは影響ありません。
3×10⁻³〔mol〕のCH₃COOH が 100mLの水溶液で示すpH・・・水素イオン濃度の問題と考えましょう。
(気づけなくても大丈夫ですが、水素イオン濃度を求めるということは、pHを求める問題と同じ系統の問題です。また、選択肢①の水素イオン濃度では、アルカリ性よりの中性となってしまうので、答えとしておかしいとわかりますね。)
ここからは電離定数も考えていくので、「物質量」ではなく、「モル濃度」で考えていきます。
モル濃度は1Lあたりの物質量ですが、1L あるとしたら?・・・で考えるとよいです。
今、100mL に 3×10⁻³mol なので、1L あったとしたら物質量はその10倍です。
「10」の指数の方に、10をかけましょう。
3×10⁻³×10 = 3×10⁻²
よって、酢酸のモル濃度(電離する前)は、 3×10⁻² mol/L です。
ここで、①の反応式にもどります。
CH₃COOH ⇄ CH₃COO⁻ + H⁺ ・・・①
この反応の右向きの矢印がどれだけ進み、水素イオン H⁺ がどれだけ生じるかを調べれば、この問題の解答になります。
ここで使うのが、電離度です。
電離度とは、水にとかした電解質のうち、どれだけ電離するかの割合を示したものです。
酢酸の電離度を、α(アルファ)とします。〔ホームページに入っているフォントと画像で、書体のずれがありますが、お許しください。)
電離度は「割合」にあたる値なので、全体(ここでは酢酸の物質量)に、これ(電離度)をかければ、電離する分の物質量が出ます。
今、酢酸の「モル濃度」、3×10⁻²mol/L で考えています。
(ここが、わかりにくいという人も多いでしょうが、)このままモル濃度で考えていって大丈夫です。全体で1Lある場合を考えていると、考えればいいですね。
1Lあたり、「3×10⁻²×α」mol の酢酸が電離します。
反応式①より、電離した酢酸と同じ物質量(モル数)の水素イオンが生じるので、この「3×10⁻²×α」が答えそのものです。(今、1Lあたりで考えているので、水素イオンの物質量が、そのままモル濃度になります。)
αを求めればよいということになりますが、ここで与えられた電離定数を使います。
ここまでを、まとめてみましょう。下のような表をつくるといいです。
3×10⁻²という数値を、わざわざ入れるよりも、c=3×10⁻²〔mol/L〕と表すといいです。
「電離前」、「(電離による)変化量」、「平衡状態(での濃度)」で、表の項目をつくります。
いずれも単位は、〔mol/L〕(1Lあたりの物質量)です。
酢酸は、c あるうちの cα が電離しますので、平衡状態で残っている(1Lあたりの)物質量は、c-cα ・・・ c を前にくくりだして、c(1-α)〔mol/L〕です。
また、反応式の係数から、酢酸が電離した分、それと同じ物質量だけ酢酸イオンと水素イオンが生じますので、それぞれのモル濃度は、cα〔mol/L〕です。
酢酸の電離定数(Kとします)を表す式は、それぞれのモル濃度を[CH₃COOH]、[CH₃COO⁻]、[H⁺]とすると、(そういうものだから、といってもいいのですが、電離する酢酸の割合を示すものなので、左辺の酢酸が分母にくるのは、自然ですよね)・・・
これに、K=2.7×10⁻⁵、[CH₃COOH]=c(1-α)、[CH₃COO⁻]=[H⁺]=cα を代入して・・・
酢酸の電離度 α はひじょうに小さいので(注:この問題でこのことわりはないですが、電離定数から判断できます)、「1-α」は1と近似できます。「1」なので、消してよいです。
c を約分したくなりますが、ここで、少し方針を転換します。
当初は、α を求め、それを 3×10⁻²×α に代入するつもりでした。
(もちろん、当初の方針のまま c で約分しても、まったく問題なく答えは出ます。)
ここで求めたい水素イオン濃度が「cα」なので、「cα= 」の形に変形できた方が直接的です。
左辺の分子を「(cα)²」の形にし、後で両辺の平方根をとる方針でいきましょう。
両辺に c をかけ、左辺の分母の c は払います。
ということで、答えは 9.0×10⁻⁴ mol/L・・・③になります。
正解:③
平衡状態とは、見かけ上、反応が止まっているようにみえるだけで、実際に反応が止まっているわけでは、なかったですよね。
右向きの反応と、左向きの反応の反応速度がまったく同じになるので、反応が止まっているようにみえるだけでした。
それがわかっていれば、この問題でも、「v₁=v₂」で、方程式をつくり、それを解けばいいだけだとわかります。選択肢の数値をみても、簡単な方程式をつくれそうだと予想できます。
求めたいものを文字でおくのが基本なので、平衡状態の〔B]のモル濃度を、「x mol/L」としましょう。
これも問2と同じように、モル濃度で考えていって大丈夫です。溶液中の反応なので、反応が進んでも体積はほとんど変わらりません。
⑴の反応式 「A ⇄ B + C」の係数より、Aが1molから、BとCが、それぞれ1molから、molずつ生じるとわかります。
今、Bが x mol/L 生じた(1L あたり x mol 生じた)として考えているので、Aは x mol/L 減少しています。
まとめると、次のようになります。
〔A〕、〔B〕、〔C〕はそれぞれ A、B、C のモル濃度であり、平衡時の反応速度 v₁、v₂は、画像の一番下、赤字で示された「平衡状態」のものを使えばよく、
これに、与えられた k₁、k₂ の値を代入し・・・
両辺を入れかえて計算を進めましょう。後は簡単な2次方程式です。
正解:①
水素貯蔵合金Xは、その体積の1200倍のH₂を貯蔵できるそうで、設問では与えられた質量のXが貯蔵できるH₂の物質量が問われています。
ということは、まず必要なのはXの体積です。ここから求めましょう。
Xは248gあり、密度が「6.2 g/㎤」と与えられています。
これを使って、体積を求めます。
求め方には、「比例式」、「単位を元にした計算」などがありますが、単位の意味(わり算の使い方)から、よりすんなり求められることをめざしましょう。(「比例式」、および「単位を元にした計算」による導出法は、解説動画の方で紹介します。)
まず、密度(g/㎤)というのは、1㎤あたりの質量のことです。
248gのXの体積は、248gの中に、1㎤あたりの質量である6.2gがいくつ分あるか?・・・考えればよく、わり算で・・・
「248÷6.2〔g〕」・・・です。
後で簡単になるかもしれないので、この形のまま計算を進めることもありますが、この場合はわりきれることもみえるし、㎤ の単位を L 単位に換算する必要もあるので、計算しておきましょう。
248÷6.2 = 2480÷62 = 40
Xの体積は、「40 ㎤」です。
L単位に変換する必要がありますが、後からでいいでしょうね。
Xは、この 40㎤ の1200倍の体積のH₂を、含むことができるので
「40㎤×1200」・・・これが、X248gが含むことのできるH₂の体積です。
ここで、計算の工夫というまででもないですが、「0」が3つあるので、それを活かしましょう。
「0」が3つは、単位の換算に活かしやすいです。
40㎤×1200 = 48×10³〔㎤〕
1㎤=1mL なので、 48×10³ ㎤ = 48×10³ mL
また、〔m〕というのは1000分の1(×10⁻³)のことなので、これをL単位にするには10⁻³をかければよく
48×10³×10⁻³=48 (・・・10³×10⁻³がちょうど1になって、消えます。)
水素の体積は、「48L」と、わかりました。
後は、これを気体の状態方程式にあてはめ、物質量を求めます。
・・・と思いましたら、これも標準状態ですね。22.4Lで、1molです。
標準状態で48Lの気体の物質量は、48Lの中に1molあたりの体積である22.4Lが、いくつ分含まれているか考えればよく、わり算で・・・
48÷22.4 ・・・(もとになる数)と(わる数)を、それぞれ10倍して
=480÷224
この時点で、正解は④とわかりますね。
たいした計算ではないので、計算してもよいです。
480÷224=2.14......
また、この部分の比例式を使った解法も、動画の方で紹介します。
正解:④
「燃料電池」なので、水素をエネルギー源として、電気エネルギーをとり出すことは共通しています。(注:酸素は空気中に十分に存在しています。)水素を空気中の酸素と化合させるので、水が排出されます。
化学式は一般に、・・・ 2H₂ + O₂ → 2H₂O となります。
このことは、最初に頭に入れておきましょう。
さて、燃料型電池について考えていきますが、やはり、使われている電解質に着目するといいです。
各極での反応が、つかみやすくなります。
ここでは、リン酸が使われています。
リン酸は中程度の強さの酸で、一部が電離します。
三価の酸なので、本当は三段階に分けて電離しますが、ここでは簡単に H₃PO₄ 1つから、水素イオン H⁺ 3つと、リン酸イオン PO₄³⁻ が1つできると考えて、図に描きこんでみましょう。
すでに、水溶液中に水素イオン H⁺ が存在していることが、重要な手がかりになります。
さて、選択肢をみてみましょう。まず、ア側の電極とイ側の電極で、酸素 О₂ と水素 H₂ かの二拓です。
覚えているか覚えていないかではなく、考えればわかります。
ア側の電極から電子が出されています。
水素 H₂ と酸素 О₂ のうち、電子を出すとしたら、陽イオンになりやすい水素の方です。
ア側が水素 H₂ で、イ側が酸素 О₂ なので、これで選択肢は④~⑥にしぼられます。
(電子の流れが、ア側の極からイ側の極なので、電流の流れはア側からイ側と考えます。よって、ア側が負極で、イ側が正極となります。)
「排出される物質には未反応の物質も含まれる」という前提なので、ウからH₂、エからO₂が排出されることはわかります。選択肢も、その点はすべて満たしています。
もう少し、細かく考察する必要があるので、各極の反応を確認してみましょう。
負極での反応は次のようになります。 H₂ → 2H ⁺ + 2e⁻
水素が電子を失い陽イオンになり、水溶液中に水素イオン H⁺ となって、広がっていきます。
次に正極の反応について考えましょう。
酸素を吹き付けていますが、すでに水溶液中に水素イオンがあることがポイントです。
負極の反応以前にも、リン酸が電離した水素イオンもありましたね。
よって、吹き付けられた酸素は、水溶液中の水素イオンとむすびつき、水分子 H₂O になるだろうと考えられます。水素イオンは電子を1つ失た状態なので、電極から電子を受けとり電気的に中性になります。
反応式は次のようになります。
O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ → 2H₂O
正極では水が生成され、それがエから排出されます。よって、正解は④となります。
ポイントは、最初の段階で水溶液中に水素イオン H⁺ が存在していることです。
それをおさえておけば、各極の反応も丸覚えするより、すんなり頭に入りますし、覚えていなくても本番のテストでひねり出すことも可能ですよね。
どちらにせよ、図に描いてみることが大切です。
正解④
前問で、各極の反応を確認しました。
負極: H₂ → 2H⁺ + 2e⁻ ・・・①
正極: O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ → 2H₂O ・・・②
電子の数を合わせ、1つの式にしましょう。
①×2+②より・・・
2H₂ → 4H⁺ + 4e⁻ ・・・③
+) O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ → 2H₂O ・・・④
・・・ 2H₂ + O₂ → 2H₂O ・・・⑤ という反応式が得られます。
(e⁻ と H⁺ は両辺に同じ数ずつあるので、消えました。)
この反応式から、2molの水素と1molの酸素が、ちょうど反応することがわかります。
この問題も H₂ 2.00mol、O₂ 1.00mol なので、これで考えればよいですね。
③、④式からもわかるように、⑤の反応式は 4mol の電子がやりとりされて、この式になっています。
ファラデー定数は、単位の「C / mol」からもわかるように、電子 1mol が持つ電気量です。
今、4mol の電子が流れたので、その電気量は、1mol 分の電気量9.65×10⁴〔C]に、それが何 mol 分かということで、4〔mol〕をかければよく、かけ算で・・・
9.65×10⁴×4 = 38.6×10⁴
= 3.86×10⁵
単位を利用して、〔C/mol〕に〔mol〕をかければ、〔C]を得られる、・・・と考えてもいいですね。
・・・正解は、④になります。
正解:④
第3問以降の解説はこちらです。
以上です。ありがとうございました。
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to ほげほげ様
ありがとうございます。ご指摘の通りです。
不適切な説明を入れてしまったと、反省します。
修正しました。
ほげほげ (日曜日, 29 5月 2022 20:34)
塩の電離度の説明にイオン化傾向を使うのはおかしいのでは