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【算数】「速さ」の問題の教え方(井出進学塾)

「速さ」の問題は、苦手と感じるお子さんが多いところです。

 

そこで今回は、井出進学塾では、どのようなことを大切にして指導しているかをご紹介します。

実際の指導法というよりは、その背景にある考え方(方針)が中心になります。

ご家庭でも、参考にできるようなところがあれば、ご活用ください。

 

大は小を兼ねる・・・ということで、今回は上記のような少し発展的な問題を扱います。

お子さんも(あるいは親御さんも)、自分で少し考えてみてから、次にお進みください。

(すんなり解けたら、この解説記事は読む必要はないかもしれませんね。)

 

 

 

・・・それでは、はじめます。

 

先に答えは出しておきましょう。

(・・・先に答えを出して、後から意味付けなどいろいろ考えるというのが、わりと当塾の授業の流儀、というか理想とするモデルです。)

 

「何分何秒かかりますか?」…という問なので、与えられた「2時間24分」はこのままでは使いづらいので、【分】単位に直しておきましょう。

 

1時間が60分、2時間で120分なので、2時間24分は120+24から「144分」とわかります。

 

これで、Aさんは、「60㎞」の道のりを「144分」かけて進むペースだとわかります。

(まだ問題を解けていない方は、この情報をもとに、もう少し考えてみましょう)

 

 

・・・実はこの問題は、当塾の「速さ」に関する教材の第6回の内容なので、ここまで進んでいると次のヒントくらいでだいたいの生徒さんは答えにたどり着きます。

 

「60㎞進むのに144分かかるということは、6㎞進むのに何分かかりますか?」

 

10分の1なので「14.4分」でいいですよね。(ここら辺がすんなり出てくるかは、計算力というか、「小数」というものをどれだけつかめているか、が前提になりますが、それはまた別の話ですので、別の機会に)

 

「6㎞を14.4分」という情報を自主的に受け止められれば、目標の「8㎞進むのにかかる時間」は、わりとすんなり考えられます。

 

3分の1して「2㎞を4.8分」からそれを4倍して「19.2分」でもいいですし、

 

「1㎞進むのにかかる時間」を考えて、14.4÷6=2.4から「1㎞を2.4分」、8㎞進むにはその8倍で「19.2分」と出してもいいでしょう。

 

ここで安心して、「19分2秒」と答えてしまうお子さんが多いので、気をつけましょう。(まあ、ある程度しかたないとは思いますけどね。)

 

「19.2分」の「0.2分」を【秒】単位に換算する必要があります。

「0.1分」は1分(60秒)の10分の1なので「6秒」

よって、「0.2分」は「12秒」になりますよね。

 

この問題の答えは、「19分12秒」となります。


ここからが本題です。

・・・今の問題は、たまたまキリのいい数字ばかり出てきました。

 

もちろん一般的な小学校(算数)の問題で、無意味に複雑な数字になる問題は出てこないでしょうが、これから先、中学生になると文字(式)も扱うようになります。高校理科にもなると、上の問題で与えられた数値がすべて文字であることも普通です。

 

ということで、もう少し一般化しておきましょう。

 

学習指導要領の変更で「速さ」は、小学5年生に移行しました。

6年生になって分数のかけ算・わり算を勉強すると、次のような考え方(解き方)もできます。

 

「2時間24分」を「144分」で扱うのは同じです。「60㎞を144分」のペースですね。

 

今度は最初から、「1㎞進むのにかかる時間」を考えましょう。

 

144分かけて60㎞を進みます。

1㎞進むのにかかる時間は、わり算で・・・

 

144÷60」・・・ということでいいですね。

 

これ以上、計算する必要は、ありません。

わり算を分数の形に表して、そこで止めておきましょう。


・・・これ(このページでは分数表記ができないので、144/60で示します)が、「1㎞進むのにかかる時間」そのものです。(大した手間ではないので計算してもいいですが、この144/60の形で1つの数値ととらえられるようにするのも、大切なトレーニングです。)


・・・1㎞進むのにかかる時間が144/60分。

今は、そのペースで8㎞進むのにかかる時間を求めたいので、これに8をかければいいですね。


この計算の処理に、あまりなじみがないかもしれません。

私だったら、まず分数部分を6で約分し、分子に8をかけたうえで10でわり、小数点1つ分小さくします。(下図参照)


(今の算数教科書の小数・分数融合問題は、中途半端でとてもよくないと思います。少なくとも、高校でそんな解き方してるとよくないぞ…と思われるものも多々あります。本題から外れるのでここまでにしておきますが、小学生の段階でも上記のような処理はできますので、積極的に計算法を身に付けていきましょう。)

 

ここで示した解法は、いわゆる・・・

「みはじ」の応用

・・・と言えます。

 

「(道のり)÷(速さ)」で(時間)が求められます(これに関しては、こちらの解説記事もどうぞ)

 

この問題の場合、(速さ〔分速:1分あたりに進む道のり〕)は、与えられた60㎞を144分でわった「60/144(144分の60)」で表されます。こちらもこれ以上計算しなくてよいです。

 

(時間〔分〕)を求める場合、与えられた(道のり)〔ここでは8㎞〕の中に、1分あたりに進む道のりである(速さ)〔ここでは60/144〕がいくつあるか考えればよいので、わり算で・・・

 

「8÷(60/144)」という式になりますが、ここで、「分数のわり算は逆数にしてかけ算に」・・・ということの解釈も進みます。

 

この計算では、(60/144)を逆数にして(144/60)という数字が出てきますが、この数字が何を意味しているか?・・・少し考えてみましょう。


(60/144)は、道のり60㎞を時間144分でわって得られた数字です。

これは「1分間あたりに進む道のり」を表しています。

 

これとは逆に、逆数(144/60)のこの数字は、時間144分を道のり60㎞でわっていることになりますので、これは、「1㎞進むのにかかる時間〔分〕」を表しています

 

かけ算なので、後ろの数に前の数をかけているという見方もできます。(ここは、問題ないでしょう)

 

「1㎞進むのにかかる時間〔分〕」に「何㎞進むか」をかければ、「何分かかるか?」という(時間)が出てくるのは、納得できますよね。

 

(かけ算の導入期に勉強した「(1つ分)×(いくつ)」というかけ算のつかい方の延長です。気づきにくいですが、大切なことは最初から習っています。)

 

 


(※実はこういう考え方〔A÷Bを、Bの逆数にAをかけるという見方〕は、けっこう好きで、高校理科をみるときは、よく使っています。今まで、なぜか小学生相手の指導では遠慮していましたが、力のある生徒にはどんどんいろいろな考え方を紹介していいだろうな…と最近は考えています)

 

元の問題に戻りましょう。

比の値(割合)を使ってもいいですね。

8㎞進むのにかかる時間は、60㎞進む時間の「8/60(60分の8)」ですよね。

 

この「8/60」が比の値(割合)です。


元になる数は、60㎞進んだときの「144分」

 

これに(割合)の8/60をかければ、求めたい値が出ます。

8㎞進むのにかかる時間は、60㎞進むときにかかる時間(144分)の60分の8・・・ということです。

 

この「かけ算の使い方」も、早めに身に付けたいところですね。

 

計算は、先ほどのものとほぼ同じになります。



 

この問題の解き方について、もう少し触れておきます。

大人の方で、そもそも、この問題なんて、・・・

比例式(方程式)をつくって、(内がけ)=(外がけ)

・・・で簡単だろ・・・と思った人も多いかと思います。

 

それはその通りで、確かに解ければいいのですが、比例式の場合方程式であるので、x=~などの形にするのに一手間かかります。

簡単なものならいいですが、高校の理科などでは、出した数値を使ってまた次の計算…ということも多いので、それでは情報が複雑になりすぎてしまうこともよくあります。

 

どちらにせよ、一度に出せるならそれに越したことはありませんよね。

 

 

また、比例式で解くのもまったくかまいませんが、計算の過程で上の式で示したような形は必ず出てきます。

 

その形になったときに、少し立ち止まり「(全体)×(割合〔比の値〕)」になっていることを確認するとよいでしょう。それにより、抽象度(理解度)が上がっていきます。今、特に重視しているところです。

(これらを意識しやすくするためにも、やはり「比の値」や「割合」という用語は有効ですね。)

 

結論としては・・・

「かけ算・わり算の使い方」が大切です。

 

 

すでに、かけ算(あるいは、わり算)とわかっているものはいいです。

ある量を求めるのに、なぜそれが、「かけ算で求められるのか?」、あるいは、「わり算で求められるのか?」…判断できるすべを、積み重ねていきましょう。

 

ここで示したような考え方は、実はすでに小学校の算数で扱われているものです。

(忘れていても無理はないです。私も小学生を指導するようになってから、初めて知りました。)

 

 算数の内容が、高校理科にいかにつながっていくかは、こちらの記事もご覧ください。

 

以上です。ありがとうございました。

 

ページの一番下にコメント欄もありますので、そちらもよろしかったらどうぞ。


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付記

(以下は、ツイッターで変なのにからまれて嫌な思いをされている小学校の先生に向けてのコメントです。それ以外の方は、ご遠慮ください。)

 

 

 一般のみなさんには、想像できないようなことですが、実はこのような解説記事をあげるとSNS(特にツイッター)で、からまれます。集団でからんできます。

 

「単位あたりの量が大切と言ってる時点で、数学ができない証拠だ~!」

「式に意味なんてない!この馬鹿めが!」

「かけられる数も、かける数もない!邪教の教えだ~!」

「1つ分にとらわれてるやつらは、これだからな。ば~か、ば~か」

・・・などのような、リプが多々よせられます。主として「かけ算順序がどうの~」といってからんでくる人たちのことです。

(注:実際に、私や同じような主張をしている人たちが受け取っているリプです。)

 

頭がよく数学ができて、かつツイッターを大事な居場所としている人たちにとっては、私が今回示した上記のような考え方は、かったるくさげすむべき内容のようです。

 

確かに、頭のいい人らはこんなことまで考えなくてもできるのかもしれません。

 

高校理科で難しい内容になってきても、正比例・反比例やその他の考え方から、自然に答えがみえるような人もいくらでもいるでしょう。

 

今は少なくなりましたが、昔の高校理科の問題集の解説なんて、何の説明もなく「A×B÷C×D÷E」(注:アルファベットは、各種数値)という式だけのっているものも多かったです。

 

 

それでわかる人もいるでしょうし、そのような理解こそ理想だ…という考えもあるかもしれません。

一部の、それでわかるという人らは、それはそれでいいでしょう。

 

 

私は式の意味を考え、かけ算・わり算の使い方を身に付けていった方がいいと考えています。

かけ算・わり算が使いこなせれば、算数(数学)・理科の勉強が楽しくなります。

それに越したことは、ないですよね。

(今回の問題解説のように、自在に考えられるようになったら楽しいと思いませんか?)

 

 

かけ算は、「〔A×B〕を1つの数値(積)とみる」見方だけではありません(長く勉強から離れている一般の大人の方にとっては、この見方だけが普通かもしれませんね)。

 

かけ算〔A×B〕には、「AにBがかけられている(あるいは、BにAがかけられている)」という見方もあります。さらには、「AにBをかける(あるいはBにAをかける)」と能動的に「かけ算の【使い方】」ということもできます。

 

その使い方・見方をできるようにすることが大切だ、…というのが、私が日々実践し、解説記事などで主張していることです。

 

小学校の算数教育で出てくる「かけ算の順序」(一部、ネガティブな印象が付いてしまっているようでとても残念ですが、)も、本来はこのような話です。

受け身ではなく、それが「なぜ、かけ算で求められるか?」…と判断するための一助です。

大人の方なら、小学校低・中学年の文章題くらいなら、何も考えずに自然と「これは、かけ算で求められる」…とわかるでしょう。小学生は、今、自然とかけ算とわかる範囲を増やしていってる段階です。

 

導入の際は、さらに現場の小学校の先生にしか、わからないことも多いでしょう。

「答えがあっていれば何でもいい」のではなく、導入でも最も大切なことは、そもそも「かけ算とは何か?」…ということでしょうし、・・・基本の使い方が身に付いていれば、先の学年・学校に進んで抽象度が上がっても対応がしやすくなります。

 

 

私などがからまれても、なんということはないですが、

心ある学校の先生らが、試行錯誤の上の実践を、あういう連中に上げ足をとられ(ツイッターにかけられる時間が違うので、かないようがないですからね)からまれているのをみかけると、非常に胸が痛みます。

 

どうか、小学校の先生方は、そのような雑音を気にすることなく、現実の(目の前にいる)生徒さんたちのために最善を尽くしてくださいませ・・・ということを、この解説記事の裏テーマとして、今回の記事はここまでです。