前回の教科書改訂の大きな特徴の1つですが・・・
「⊡ や 〇 を使って関係する式(等式)を立てる」…ことに関する独立した単元がなくなりました。
その代わり、他の単元の各所に、この「⊡や〇を使った等式の立式」がちりばめられていて、今回扱う単元もそのうちの1つです。
独立した単元がなくなったからこそ、注意しておかないこともあり、今回はそれに関する解説記事です。
次のような問題を考えます。
(1辺)1㎝の正方形を並べた次のような形をつくります。
図で示したように縦(あるいは横)に並べた正方形の個数で「⊡だん」と呼ぶことにします。
このとき、「だんの数」と「まわりの長さ」の関係は次の表のようになります。
(画像は、学校図書版:みんなと学ぶ小学校算数4の下 より引用)
設問の①で、表の開いている項目をうめ、
②で、だんが「1つ」増えるごとに周りの長さが「4㎝」ずつ増えている関係を確認します。
そして設問の③が次の内容です。
「どのように考えたか説明しましょう」…という指定なので説明してみますと・・・
1だんあたり「4㎝」ずつ増えていてそれが ⊡ だんあるので、「4×⊡」
・・・それがまわりの長さ「〇」㎝になる
・・・必ず使いこなせるようになっておきたい「(1つ分)×(いくつ)」という、かけ算の使い方の基本です。
本題はここからで、この設問で注目すべきところは・・・
「どのように考えたか・・・」…という指定そのものです。
このように言われているということは・・・
別の考え方をしてもよい・・・ということになりますね。
(一部に教科書にこの表記があると、このように考えろという強制だ~!…と、とらえる人たちもいるようですが、ひねくれたとらえ方だと思います。)
では、別の考え方とは何か?
・・・これもかけ算の重要な使い方として、早い段階から扱われているものですが・・・
表から「だんの数」を4倍すると「まわりの長さ」になることは、判断できます。よって・・・
「 ⊡ ×4=〇」・・・としてもよいです。
(もちろん、これらとはまた「別の考え方」でもいいでしょう。)
もともとそういうものだったのですが、今回の改定で「割合」の重視が進んでいます。
4年生の教科書で今まで「何倍」とだけ扱われていたものに、「割合」という言葉が使われるようになっています。
生徒さんに授業のようすを聞いたり、準拠教材の解説をみる限り、以前に比べ、この『「 ⊡ ×4=〇」・・・としてもよい』が、より積極的に扱われているようです。
時間がなく指導要領や指導書などを調べたりはしていないので断言はできませんが、おそらく、正式にその方向を強めるようになっているのでしょう。
ただし、これは根本的なところに変化があったということではなく、強調(重視)するところが変わってきたという話です。
うちなんか、こういうキャラをつくってるくらいですからね。
(背景としては中学数学での「比例」のとらえ方の変化も大きく影響しているだろうと考えますが、本題と離れますので今回は省略します。)
で、ここからが本題です。
「 ⊡ ×4」、「 4× ⊡ 」のどちらも正しいですが、だからといって・・・
かけ算の順序はどちらでもよい
・・・ということに、なるでしょうか?
ならないですよね。
なぜ、「かけ算で求められるのか?」…それをつかめているかが大切です。
日本全国の小学校高学年の文章題の勉強で、
「テストでかけ算でいったら×だった、わり算にしておけばよかった…」とか、
あるいは学習塾など指導の現場で、
「(生徒)『5.5÷2.2』
→(先生)『ちがいます。』
→(生徒)『じゃあ、5.5×2.2』」・・・のような状況が多々あるでしょう。
前者で、確かにわり算にしておけば正解だったかもしれませんし、
後者で、こういうやりとりをしていけばどれかは正解になるでしょう。
・・・でも、あまり意味ないですよね。
かけ算・わり算の使い方こそ、生徒さんに身に付けておいてもらいたいです。
特にうちは完全個別指導塾です。(すみません。実はこのブログの主目的はスタッフ講師の研修用です。)
前述の問題で、まだ小学生なので生徒さん自身が、なぜ「 ⊡ ×4」、あるいは「 4× ⊡ 」にしたか?…(仮に考えがあったとしても)言語化できないことも多いでしょう。
そんなときに、「そうだね、⊡を4倍した数になるよね。」とか、「そうだね、1つ分が4㎝でそれが⊡あるよね。」…などと、付け加えてあげましょう。
それだけで、生徒さんの理解・定着に大きくつながっていきます。
また生徒さんの状況次第ですが、別の考え方もなるべく触れるようにしましょう。
前述の「かけ算の順番はどちらでもいい」に対してですが、
「どちらでもいい」のでは、ありません。
かけ算の順番は、どちらも使いこなせることが望ましい
・・・です。
具体例をあげましょう。
「2.5時間は何分か?」…という問題について考えてみます。
1時間あたり60分で、それが2.5時間だから…
「60×2.5」
・・・と考えてもよいですし、・・・
〔時間〕単位は60倍すれば〔分〕単位になるので・・・
「2.5×60」
・・・と考えてもよいです。
もちろん、小学生の生徒さんに最初からどちらの考え方も自在に使えるように…というのは、難しい話です。
しかし、その方向への意識づけは早い段階から始めておいてよいことです。
どちらにせよ、指導する側がそれぞれの式において個々の数のもっている意味を理解しておくことが大切です。それがあれば、生徒さんが本当にわかっているのか、それとも適当に言っているだけなのか、みえてきます。
あいまいだけどなんとなくはわかっている…という状況もあります。
そういう際も、適切なはたらきかけをすることができます。
(なお、念のため補足しておきますが、「60×2.5」の形のまま「2.5に60をかけている」(「2.5×60」についても同じ)と考えてもいいですが、それは当たり前すぎることですし、多くの生徒さんにとって大したハードルにならないことなので、ここでは省略します。)
そして、これは・・・
高校の理科にもつながります!
「くわしくは『算さば(算数でさばく高校化学計算問題)』をごらんください。
中1理科で出てくる『密度(g/㎤)』でみていきましょう。
単位からもわかるとおり、「1㎤あたりの質量(g)」のことです。
例として・・・
「体積 125㎤ の鉄の質量は何gか?ただし鉄の密度 7.87g/㎤ とする。」…という問題を考えてみます。
①「1㎤あたりの質量である7.87gに、(それがどれだけ分あるかということで)体積の125㎤をかける」でもいいですし・・・
②「体積の125㎤をg単位の数値に変換するため、密度の7.87g/㎤をかける」・・・と考えてもよいですね。
高校の理科では、問題の設定も複雑になってきます。
状況に合わせてこれらの考え方を自在に使いこなせたら、難しいといわれている理科の計算問題も、
・・・楽しくなってくると思いませんか?
もちろん、ここまで考えなくても自然と計算方法がみえてくる頭のよい人もいるでしょう。
また、ある人にとって、ここまではかけ算(あるいはわり算)とわかるけど、こういう問題になってくると難しい・・・ということもあるでしょう。
もとより、長方形の面積などほっといてもかけ算とわかるものを、あれこれ考えても仕方ないですが、それと同じように自然とかけ算(わり算)とわかる範囲を増やす・・・という方向性も選択肢のうちの1つであることは否定しません。そういう塾があってもいいでしょう。
ただし、算数や理科の計算問題が苦手な人が多いというのも、まぎれのない事実です。
当塾では、このような「かけ算・わり算の基本的な使い方」を重視し、一定の成果を上げ続けています。
ご家庭でも、お子さんの勉強をみてあげるとき、ここら辺を気にしてあげるとよいかもしれませんね。
以上です。
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