「物理基礎が最初からわからず困ってるという人へ・・・小3の算数で解決します」・・・というタイトルの解説記事を始めていたのですが、申し訳ありません。
〔単位〕を含んだ計算は紹介しておくべきなので、はさみます。
分数のかけ算・わり算になるので小6内容ですね。
まぁ、大目にみてください。ためになる話ですよ。
(10年くらい前に塾の宣伝用につくった冊子の内容を、ネット用に再編集したものです。今思えば大胆なタイトルですね。)
「単位」について
「単位」のことさえしっかりわかっていれば、高校の物理や化学なんて本当に簡単です。
しかし、それがなかなかむずかしいです。
世の中には、あまり勉強していないのに、物理や化学などテストでよい点数をとる生徒さんもいますよね。
彼ら、彼女らはいったい何がちがうのか?
「単位」というものを、ちゃんと理解しているだけです。
とはいえ、どうしたらよいのかわかりませんよね。
だからこそ、物理がよくわからないという生徒さんが昔も今も多いのでしょう。
この解説記事をつかえば大丈夫です。
「物理をわかるようになりたい」という気持ちさえあれば、どなたでも物理が分かるようになります。
くり返しますが、大切なのは「単位」という考え方です。
そこで今回は序章として、「単位」と「計算」の関係について基本的なことを学んでいきます。
まず、次の問題について考えてみましょう。
どうでしょうか?
この答えは後述します。
「単位」について、簡単なところからおさらいします。
「面積は2つの数字をかけるから『2』と教わりますよね。
それでまちがいではありません。
もっと正確に言えば、この「2」は2乗の「2」です。
例えば、 4a×3a という計算で、「4かける3で12、a×a で a² 」なので 4a×3a=12a²
・・・こういうふうに計算しますよね。
実は面積の計算も同じで、例えば・・・
このように「単位」とは計算とは別に存在するものではなく、本来は「計算式」や「等式」に含まれているもの、このように理解しましょう。
このことをふまえ、次に「速さ」についてかんがえてみます。
問2)ある人が、180m の道のりを3分かけて歩いた。このとき、この人の歩く速さを求めなさい。
3分で180m なので、「分速~m」 の単位で表せばいいですよね。
分速の単位は 〔m/分〕とも表します。
分速は1分あたりにすすむ道のりなので、180m を3でわって
180÷3=60 より 「分速60m」 と簡単にでますが、単位からも考えてみましょう。
〔m/分〕という単位から「分数は分子÷分母」なので、
〔m〕の方を〔分〕でわると判断できれば充分です。
180m ÷3分=60 m/分
※道のり(距離)の単位は〔km〕〔m〕など
時間の単位は 〔h〕(hour=時間)、〔m〕(minute=分)、〔s〕(second=秒)などを使い、
速さ(速度)の単位はこれらを組み合わせます。
〔km/h〕(キロメートル毎時=1時間に何㎞すすむか)が日常でよくみる単位ですが、
物理の世界では基本単位である〔m/s 〕(メートル毎秒=1秒あたり何 すすむか)がよく使われます。
なお〔分〕は〔m〕と表すこともありますが、メートルの〔m〕と同じなので、わかりやすいように前問のように〔分〕としました。
そもそも分速はあまりでてきませんが、対応するのは簡単です。
問3)速さ5.0m/s で8.0秒間走ると何m 進むか。
〔5.0m/s〕=〔秒速 5m〕…1秒あたり5m 進むという意味です。
よって8秒間では 5×8=「 40〔m 〕」 すすみます。
簡単ですよね、単位の意味さえ分かっていれば大丈夫ということです。
「みはじ」のようなものに頼らなくてもいいですよね。
毎回、単位の意味さえしっかり考えるようにしていれば、そのうち考えなくても答がみえるようになります。その方が早道です。
単位計算からもアプローチしてみましょう。
分母の「s」を消せば「m」が残ります。
8s( sは8秒のこと)をかければ、分母の「s」が消え〔m〕単位になります。
問4)速さ25㎞/h で走る自動車は、100㎞ 進むのに何時間かかるか。
25㎞/h は1時間に25㎞ 進むという意味です。
ですから、100㎞ の中に25㎞ がいくつ入っているか考えれば答えです。
100の中に25がいくつあるかなのでわり算です。
100÷25=4 「4時間」
これも「みはじ」に頼らず、このように考えるのがいいです。
大丈夫です。最初は少し大変と感じるかもしれませんが、すぐに慣れます。
単位計算からもアプローチしてみましょう。
〔㎞/h〕単位と〔㎞〕単位が与えられていて、
求めるのは〔h〕単位(何時間か?)です。
☆もう1つ確認しておきたい大切なことがあります。
それは…
わり算には「2種類」の意味がある
・・・ということです。
例えば「15÷3」について考えましょう。
これは 〔1〕 「15を3等分するといくつか」 と
〔2〕 「15の中に3はいくつ入っているか」 と2つの意味です。
案外、誰でもどちらかにかたよっているものです。
多いのは 〔1〕の意味だけにしばられていて、〔2〕 の意味は忘れているというパターンです。
これまでにみた「速さ」の問題でふり返ってみましょう。
問2)「3分で180㎞ 歩いたときの分速」を求める問題。
これは1分あたりの道のりを求めたいので、180 を3等分するので
180÷3···· これは〔1〕のわり算です。
問4)「速さ 25㎞/h で100㎞ 走るのにかかる時間」を求める問題。
これは100の中に25がいくつあるかを考えるので、
100÷25···· これは〔2〕のわり算です。
この2のわり算の意味は忘れがちですが、とても役に立ちます。
例えば物理でこれから先「波」という分野もあります。
その分野で「ドップラー効果」に関するものなど難しい問題も多く、〝波数″というものを使って等式をつくらなければ解けない問題もありますが、このとき〔2〕のわり算の意味をとり入れて計算すれば、すんなりわかるということがあります。
少し先の話でわかりづらい例だったかもしれませんが、〔2〕のわり算の考え方をとり入れれば理解がすすむ分野はほかにもたくさんあります。
私の解説記事、ユーチューブ解説動画でも積極的に紹介していきます。
さて、今さらですが、冒頭の(問1)の解答に入ります。
(1)「30秒÷5」 30秒を5等分したらどうなるか?ということです。
よって答は 6秒 です。
(2)「30秒÷5秒」 30秒の中に5秒がいくつあるか?ということです。
よって答は 6 です。
単位計算でもみてみましょう。
また、逆にわり算「30÷5」の表すことは
〔1〕「30を5等分するといくつか」
〔2〕「30の中に5はいくつ入っているか」 ・・・の2種類のとらえ方があることをを示しています。
結論に入ります。
「小学生でもできる、たった3つのことをするだけで、誰にでも物理は簡単にできる。」
その3つをまとめます。
1 「単位の意味をそのつど考える」
例えば、20m/s とあれば、そのつど〝1秒あたり20m 進む″んだなと確認しましょう。
これだけで、その後どう計算を進めればよいかみえてきますし、それが理想です。
最初はめんどくさいなとか、大変だなと思うかもしれませんが、すぐに慣れます。
これをやるかやらないかで決定的な差がでます。
物理ができるようになるかならないかは、これをやるかやらないかです。
2 「計算の中に単位を入れて考える」
単位は独立しておらず、それ自体が計算の一部です。
1と補完的な内容です。片方が強化されれば、もう片方も強化されます。
3 「わり算の2種類の意味をしっかり意識する」
「2種類ある」と意識することが大切です。
これだけで、もうあなたはまわりより2歩も3歩もリードしています。
以上です。
ご意見・ご感想、お待ちしています。
下のコメント欄にどうぞ。
執筆:井出進学塾 井出真歩
#物理基礎
#速さ
#等加速度直線運動
無料体験授業も、受付中です。
tetragon (日曜日, 16 7月 2023 12:22)
「等分除と包含除」の方にコメントを入れさせて戴こうと,noteにログインしてみたのですが,うまくいかなかったのでこちらにコメントさせて戴きます。
私は高校の物理を教える立場から,等分除と包含除の違いを重視してきました。… 数教協関連の書籍から学びました。
同じわり算でも,「速さ=距離÷時間」と「時間=距離÷速さ」では意味合いが異なると感じていたことにうまくはまっていたのですが,算数の指導内容を調べてみたところ,算数では「異なる種類の量」のわり算やかけ算を扱わないと言うことを知って,算数で教える「速さ」と中学以降の理科で教える「速さ」は異なる概念であると気が付きました。… 数教協の指導法はフライング?
算数で教えている「速さ」は「1秒間当たりに進む<距離>で単位は m」,中学以降の理科で教える「速さ」は「進んだ距離とかかった時間の<割合>で単位は m/s」という違いがあったのです。
純粋に等分除と包含除を考えられるのは,算数の範囲となる「同じ種類の量」の倍の考え方に限定されるので,等分除なら「6m÷2=3m」の分割,包含除なら「6m÷2m=3」の累減になると思います。
中学以降の理科で教える「6m÷2s=3m/s」という計算(考え方)が,等分除ではないことを改めて確認しました。… 6mを2sで分割することは出来ません。
同様に,「6m÷2m/s=3s」というわり算も,6mの中に2m/sはひとつも含まれていないので包含除ではありません。
私が理解した範囲では,算数で教えられている「速さ」等の概念と中学以降の理科で教える概念が同じではないので,等分除と包含除の違いから発展させるのは少し無理があるかなと考えています。
しかしながら,ブログの全体から伝わるコンセプトとして「組立単位」の考え方を重視されているようなので,ぜひ発展させて戴きたいと考えています。… 応援しています!
tetragon (土曜日, 15 7月 2023 10:10)
「等分除と包含除」の分を読ませて戴き,そちらの方にコメントを入れさせていただきます。
理科的には,数値的なわり算の計算が出来れば良いというものではなく,量的な変化を考えることが大事ですよね。
井出進学塾 (火曜日, 11 7月 2023 18:38)
to tetragon様
申し訳ありません。『算さば』の方にもコメントをもらっていたようで、
なぜか通知が来ず、今、気づきました。
等分除と包含除について、私の考えをまとめた解説記事を紹介しておきます。
上に参考資料として、貼っておきました。
これをふまえ、またご意見等いただけたらうれしいです。
tetragon (土曜日, 01 7月 2023 22:45)
ご存じのことと思いますが,算数で教える「速さ」と中学以降で教える「速さ」は意味合いが異なっています。
算数では基本的に同じ種類の量しか扱わないので,算数の「速さ」は時間を揃えた時の「距離」の長短で計ります。中学以降では異なる量の割合(度合)を教えるので,この「速さ」は「距離と時間の割合(度合)」で,イメージ的には「2量の傾き」に当たると考えています。
この違いが広く知られていないので,中学や高校の教員でも中学以降の「速さ」の意味を改めて注意深く教えることをしていないのではないかと思っています。
また,わり算には「2種類」の意味があるということですが,これは同種の量を扱う算数の範囲に限られていると考えています。中学以降では「密度」や「速度」のように異種量の比較のための割り算が行われますが,これは等分除でも包含除でもない第3のわり算だと考えています。
数教協などでは,30m÷5sは等分除,30m÷5m/sは包含除などと分類していて,私もそのように考えてきたのですが,算数の勉強をしてみてその誤りに気が付きました。30mを5sで等分は出来ず,30mの中に5m/sは1個も含まれていないですよね。
井出進学塾 (木曜日, 29 6月 2023 16:32)
tetragon様
コメントありがとうございます。
高校の物理の先生からコメントをいただき、うれしい限りです。
中高生のみなさんに、理科に対する不必要な苦手意識を少しでも減らせる一助にでもなれば、…と思い、解説記事など、どんどん出していきたいと従来考えていましたが、励みになります。
単位表記のご指摘もありがとうございます。
なるべくすぐに修正します。
tetragon (木曜日, 29 6月 2023 08:53)
高校で物理を教えています。…「単位を付けた計算」はとても良いと思っています。
高校の教科書でも,伝統的に単位を付けない数値だけの計算をして答えだけに単位を付ける方法が主流だったんですが,この10年ぐらいで単位を付けた計算を記載するものも出てきました。
私は30年以上前から「単位を付けた計算」を実践・提案してきたので,この状況を喜んでいます。
しかしながら,「単位を付けた計算」の意味と言うか,算数・数学が得意でない児童生徒は「単位の計算」の意味(単位の約分など)が理解できないので,指導の難しさを感じているんですが,良い指導法があれば教えて戴きたいと思っています。
ひとつだけ指摘させていただくと,単位の記号は「正立体(ローマン体)」で表すようになっているんですが,「m」等の記号が「斜体(イタリック体)」で記述されている部分が見られました。昔の算数・数学の教科書で使われていたフォントだと思いますが,現在では算数・数学の教科書でも「正立体(ローマン体)」で統一されていると思いますので,訂正して戴ければと考えています。