反応に関わる各物質の生成熱が与えられています。
⑴の式に近づけていくように、それぞれ式に表していきましょう。
生成熱とは、それぞれの成分元素の単体から、その物質が生成するときに出すエネルギーのことです。
⑴の左辺に CO₂(気)があるので、これからです。C(固)+ O₂(気) = CO₂(気)+394 kJ/mol
⑴式に合わせ左辺と右辺を反対にしておきましょう。CO₂(気)+349 kJ/mol =C(固)+ O₂(気)
「=」の位置を縦に合わせてならべていくので、左側に余裕をもたせておきましょう。
次に、NH₃・・・ 1/2N₂(気)+3/2H₂(気)=NH₃(気)+46 kJ/molとなります。
左辺・右辺を入れ替えますが、⑴式でNH₃ の係数が 2 ですので、両辺を2倍しながら入れ替えましょう。
先ほどの CO₂ の式と「=」の位置を合わせ 2NH₃(気)+92 kJ/mol=N₂(気)+3H₂(気)
・・・となります。
次に⑴式の右辺をみていきましょう。尿素 (NH₂)₂CO からです。原子の数に注意して・・・
N₂(気)+2H₂(気)+C(固)+1/2O₂(気)=(NH₂)₂CO(固)+333 kJ/mol
これは、このままでいいでしょう。
最後に水 H₂O で H₂(気)+1/2O₂(気)=H₂O(液) となります。
今このようになっています。この辺々をたしていきます。
左右に同じ数だけある物質は、消すことができます。
後は、両辺から 486 kJ/mol をひいて答えです。
でも、実際にはここまでしなくても答えは出るんですよね。
熱化学方程式は今年で無くなります。
現在の高校2年生より下の生徒さんらは、別の考え方で処理することになります。
そちらの考え方でも、有効な考え方なので紹介しておきます。
まず、⑴の左辺の二酸化炭素 CO₂ 1mol とアンモニア NH₃ 2mol を成分元素の単体にもどすのに、「394+46×2」より、「486 kJ」のエネルギーを必要とします。
「486 kJ/mol」のエネルギーを使って得た各成分元素の単体から、尿素 (NH₂)₂NO 1molと水 H₂O 1mol が生成されると「333+286」より「619 kJ」のエネルギーが発せられます。
さしひき、「619-486」より、133kJ のエネルギーがこの反応では発せられることがわかります。
正解 ⑥
こういう問題は選択肢を1つずつ検討していくよりも、初めにこの装置に電流を流すことによってどういうことが起こるかを確認し、その後、選択肢をみて判断していく方が速いです。
・・・と、思いましたが、この問題はそこまでしなくても答えが出ますね。先にそちらを紹介しておきます。
まず、水溶液によっては水分子が分解されて水素 H₂ や酸素 O₂ が発生することもあります。
ここで、水の電気分解について思い出してみましょう。中学内容の解釈で十分ですよ。
水素原子は、プラスの電気をもつ水素イオン H⁺ になりやすいので、マイナス極にひきよせられマイナス極から水素が発生しました。
酸素原子は、マイナスの電気をもつ酸化物イオン O²⁻ になりやすいので、プラス極にひきよせられプラス極から酸素が発生します。
この問題のような電気分解も同じで、もし水素 H₂ が発生するとしたら陽極(電池の正極につながれている極)から、もし酸素 O₂ が発生するなら陰極(電池の負極につながれている極)から発生します。
電極Bは正極なので、発生するとしたら酸素です。選択肢③は、明らかにまちがいです。
選択肢④は、もっと明らかにまちがいです。
みた瞬間、こんなのあるわけないだろ…と思えないといけません。
ナトリウム Na は、イオン化傾向が強い金属です。イオンでいたがる元素といえますね。
ナトリウムのほとんどは化合物、あるいはイオンの形で存在し、天然に単体のナトリウムはありません。
こんな学校の理科室でもできる簡単な装置で、単体のナトリウムを得られるわけがないですね。
工業的にも、固体の塩化ナトリウムを高温で溶かし、それを電気分解(融解塩電解)することで、ようやく単体のナトリウムが得られます。
よって、誤りを含む選択肢は③と④とわかります。
答えは簡単にわかりますが、やはり何が起こっているかはみておいた方がいいでしょう。
本番のテストでも、そのようにした方がいいと思います。
それでは、この電気分解をみていきましょう。
まず、最初の状態を確認します。
硝酸銀 AgNO₃ は電解質で水溶液中で完全に電離し、電解槽Vには銀イオン Ag⁺ と硝酸イオン NO₃⁻ が多数存在している状態です。
また、塩化ナトリウム NaCl も電解質で水溶液中で完全に電離し、電解槽Wにはナトリウムイオン Na⁺ と
塩化物イオン Cl⁻ が多数存在しています。
また、あたり前なのですが、どちらも水溶液ですので、その中には水分子 H₂O が多数含まれています。
まず、このことを確認しましょう。与えられた図にイオンを書き込んでおくといいでしょう。
せまいので、ビーカーの外に書き込んでもいいです。(下は略図)
電流の正体は、電源のマイナス極からでてプラス極に流れていく電子です。
前提として、電極は「白金」および「炭素」なので、電極が変化する(イオンになってとけだす)という反応は起こりません。電子の流れに対して、水溶液中にある物質がどのような反応を起こすか?…に着目してみていきましょう。
電源のマイナス極から順に考えていくといいでしょう。
教科書や参考書などでは、電極の種類や含まれるイオンによって、こういう優先順位で反応する…というものがまとめられていますが、あまり頼りすぎないようにした方がいいのかな?…という気もします。
すべて、そのつど考えて十分に判断できるものです。
特に、「イオン化傾向」がとても頼りになります。
それをふまえて、みていきましょう。
まず、電極Aに電子が送り込まれてきます。どうなるでしょうか?
電解槽Vには、銀イオン Ag⁺ が多数存在しています。
銀はイオン化傾向が小さい金属です。
Ag⁺ は、本当は単体にもどりたいけど、無理にイオンになっている状態というイメージでいいでしょう。
電極にマイナスの電気をもつ電子が送られてきました。
銀イオン Ag⁺ は電極Aにひきよせられ、そこで電子を受け取り、単体の銀にもどり析出します。
Ag + e⁻ → Ag
選択肢②は、正しいです。
次に電極Bです。
マイナスの電気をもった硝酸イオン NO₃⁻ がありますが、電極Bはプラス極につながれているので、「電子が奪われる=酸化数が上がる」反応が起こります。
硝酸イオン NO₃⁻ 中の N の酸化数は最大酸化数の5なので、これ以上、酸化されようがありません。よって、水分子に電子が奪われる反応が起こります。
2H₂O → O₂↑ + 4H⁺ + 4e⁻
(この式の導き方も解説動画の方で紹介します。)
選択肢③は誤りです。
また、反応式から水素イオン H⁺ が生じているのがわかります。
選択肢①は正しいです。
電極Cにも電子が送られてきます。
ナトリウムイオン Na⁺ がありますが、ナトリウムはイオン化傾向が強い金属です。ナトリウムはイオンのままでいたがる元素なので、電子が流れてきても反応することはありません。
前述のように、選択肢④は明らかな誤りです。
電極Cでも、代わりに水分子が反応し、
2H₂O + 2e⁻ → H₂↑ + 2OH⁻
と、水素 H₂ が発生します。(この反応式の導き方も、解説動画の方で紹介します。)
白金、あるいは炭素電極で、水溶液中にハロゲン化物イオンがあるとき、陽極からはそのハロゲンの単体が発生します。
2Cl⁻ → Cl₂↑ + 2e⁻
塩素 Cl₂ が発生するので、選択肢④は正しいです。
塩素が発生することについては、理屈を説明してもいいですが、塩化物イオンがあると陽極で塩素 Cl₂ が発生することは、中学理科でたくさんみてきたはずです。
塩酸 HCl の電気分解でも、塩化銅 CuCl₂ の電気分解でも、陽極で塩素が発生しました。実験もやってみましたよね。
プラス極にはマイナスの電気をもった塩化物イオン Cl⁻ がひきよせられる…そのくらいの解釈でいいです。(陽極では電子が奪われる反応が起こりますが、この場合、水分子よりも塩化物イオンからの方が電子を奪いやすいということです。)
全体の反応は下図。
正解 ③④
まず、与えられた数値から温度 T のときの平衡定数を出しておきます。
水素、ヨウ素およびヨウ化水素のモル濃度〔mol/L〕を、それぞれ [H₂]、[I₂]、[HI] とし、
次に1mol の HI だけを入れて、平衡状態に達した場合を考えます。
求めたいものを文字でおくと手っ取り早いので、平衡状態での HI の物質量を x(mol)としましょう。
(1-x)mol 分の HI が反応し、H₂と I₂になったと考えられます。
反応式の係数の関係から、2mol の HI から、H₂と I₂は 1mol ずつ生じます。
反応で生じる H₂と I₂の物質量は、反応した HI の物質量の半分ということです。
(1-x)mol の半分は、これに 1/2 をかければよいです。
「反応前」「変化量」「平衡状態」の物質量の関係は、次のようになります。
半分の容積ということなので、その容積(体積)をV’ としましょう。
V’ =1/2Vですが、先ほどと同じで、これは平衡定数を考えるときすぐに消えるので、V’ のままいけばよいです。
容器Yにおいての平衡状態で、
を考えますが、温度が変わらないので、この値は「64」です。
「=64」として等式を立て、それを x について答えです。
計算の工夫にも注意です。「解の公式」を使うとなると、なかなか大変です。
『平方』を活かすことを考えましょう。
正解 ④
例えば②のカタラーゼなどは生物選択でなければ、あまりなじみがなくても無理はありません。
(化学でも、出てこないというわけではないですけどね。)
共通テストでは、そういう細かすぎる知識までは問われません。
こういう問題の場合、誤りを含む選択肢は明らかな誤りを含むものなので、それを頼りに探しましょう。
これは、触媒〔しょくばい〕についての問題です。
①や②の内容も、触媒についての説明になっています。
「反応速度を上げる」のが触媒のはたらきですが、「それ自身は変化しない(化学反応式には現れない)」というのが触媒の大きな特徴です。
与えられた 2H₂O₂ → 2H₂O + O₂ という反応式にも酸化マンガン(Ⅳ)MnO₂は表れていませんよね。それ自身が変化することはないので、当然、酸化数も変わりません。④が正解です。
なお、①②のように、塩化鉄(Ⅲ)FeCl₂やカタラーゼも過酸化水素の分解において触媒の役割をはたします。(過酸化水素の分解においては、塩化鉄(Ⅲ)よりも二酸化マンガンの方が反応速度を上げる効果が高いです。)
また、③のように、一般に温度を上げると反応速度は大きくなります。
正解 ④
反応速度はモル濃度の変化で調べます。
それは単位〔mol/(L・min)〕からもわかります。
モル濃度〔mol/L〕を時間(分)〔min〕でわっています。
グラフから読み取るのかな?…と思いましたが、最初のページの表1で具体的な数値が与えられていますね。こちらで計算しましょう。
2H₂O₂ → 2H₂O + O₂ という反応式から、O₂が 1mol 発生する間にH₂O₂は 2mol 分解されるので注意です。(とはいえ、O₂の発生速度を2倍すればすみますけどね。)
1.0分から2.0分の間の1分で、O₂は 0.747-0.417=0.33 より「0.33×10⁻³ mol」発生しています。
体積は 10.0mL(=10×10⁻³)なのでモル濃度の変化は・・・
=0.33×10⁻¹
・・・単位から1分あたりのモル濃度の変化を考えているので、これがそのまま酸素の発生の1.0分から2.0分までの平均の反応速度です。 0.33×10⁻¹mol/(L・s)
H₂O₂の分解反応の平均反応速度はこれを2倍して 0.66×10⁻¹mol/(L・s)
選択肢の形に合わせ 6.6×10⁻²mol/(L・s) が答えになります。
正解 ⑥
リード文に、「H₂O₂の分解反応速度はH₂O₂の濃度に比例する」とあります。
よって、反応速度を v 、H₂O₂の濃度を[H₂O₂]、反応速度定数を k とすると・・・
v=k[H₂O₂] という形で表されます。
この k が2倍になると、反応速度 v も2倍になることがわかります。
設問に入りますが、「同じ濃度と体積の過酸化水素水」とあります。
過酸化水素の物質量が変わらないので、発生する酸素の上限も変わりません。
図2から、すべての過酸化水素が分解したとしても、発生する酸素の物質量は 2×10⁻³mol は超えないくらいだろうとわかります。
よって、選択肢でいうと①、②、③、および⑥はないと判断できます。
後は④か⑤ですが、反応速度からこちらは判断します。
図2のグラフを横に 1/2 に縮小したようなものが答えになります。
⑤でいいでしょうが、はっきりと判断できる根拠がほしいですね。
表1にもどりましょう。
反応速度が2倍ということは、表1に与えられたそれぞれの時間の半分で、同じ物質量の酸素が発生するということです。
例えば、表1で6分で1.51×10⁻³mol の酸素が発生していますが、c のグラフでは3分くらいで1.51×10⁻³mol の酸素が発生しているのがわかります。
同様に、表1で4分で1.22×10⁻³mol の酸素が発生していますが、2 のグラフでは3分くらいで1.22×10⁻³mol の酸素が発生しているのがわかります。これで、⑤で正解と確認できました。
正解 ⑤
第2問は以上です。
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